【低PER≠割安】PERの使い方-②
前回はPERの意味・使い方を紹介しました。
【避けろ割高】PERの使い方-①
今回はPERを使用時の注意点を紹介します。
(前回のおさらい)
・PER=現在の株価÷一株利益
・PERは「投資の回収期間」かつ「成長の期待値」
目次
低PER≠割安
PERは投資の回収期間なので、低いに越したことはありません。
しかし、低PER=割安と単純に考えるのは危険です。
例えばエネルギー企業のような景気敏感株。
エクソンモービル | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
一株利益 | 8.42 | 9.7 | 7.37 | 7.6 | 3.85 | 1.88 | 3.23 | 4.81 | 3.19 | -5.25 |
PER | 10.1 | 8.9 | 13.7 | 12.2 | 20.3 | 48.1 | 25.9 | 14.2 | 21.9 | – |
株価 | 84.8 | 86.5 | 101.2 | 92.5 | 78.0 | 90.4 | 83.5 | 68.2 | 69.8 | – |
表はエクソンモービルの一株利益・PER・株価の推移です。
2010年代前半は原油価格が順調に推移。
一株利益が高水準で、結果としてPERは低い水準にありました。
しかし、2010年代後半に入るとオイルブームも過ぎ去り、利益とともに株価も下落。
つまり、PERが低い時に買うと割高であったことになります。
景気敏感株は、好況の時に利益が大きく上昇し、PERが押し下げられます。
しかし、PERが最低水準となった時には好況もピークに達している可能性が高く、
その後は利益の低下により株価が下がります。
景気敏感株で稼ごうと思うなら、次の好況に備えてPERが高い(もしくはマイナス)時に買う必要があります。
これは、高成長を見込んで高PERのハイテク株を買うのと変わりません。
そして成長を予想するのが困難であるのと同様、
「いつ好況が来るのか」「どの程度利益が向上するのか」を予想するのは困難です。
エクソンモービル
2021年10月17日現在
株価:62.59ドル
配当:3.48ドル(配当利回り5.61%)
企業概要
売上高が20兆円を超える石油メジャーの一角。
コロナにも負けず、38年連続増配中の高還元銘柄。
脱石油・環境投資と株主還元が維持できるかが焦点。
一株利益のややこしさ
PERの分母に使う一株利益。
こいつも曲者です。
例えば生活必需品のP&G。
P&G | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
一株利益 | 3.80 | 3.99 | 1.45 | 5.13 | 5.69 |
PER | 23.0 | 19.6 | 75.5 | 25.5 | 23.7 |
株価 | 87.2 | 78.1 | 109.5 | 131.0 | 134.9 |
安定配当銘柄の代表ですが、2019年にはPERが75.5倍に跳ね上がってます。
2019年のP&Gに新興企業並みの成長期待がかけられたわけではありません。
この年P&Gは過去に買収したジレット(剃刀メーカー)を減損。
約5,700億円の特別損失を計上しています。
一株利益にはこの一回限りの費用も含まれます。
通常の事業には特段問題が無かったのですが、減損により一株利益が大幅に低下。
結果としてPERが跳ね上りました。
一株利益には、不動産の売却といった一回限りの収益も含まれます。
この場合、PERが大きく低下し、割安であると勘違いしてしまいます。
P&Gのような安定銘柄ですら、PERを見るだけでは割安・割高の判断は困難です。
まとめ
PERだけで割安・割高を判断するのは危険です。
「低PER=割安」と安易に判断すると、思わぬ高値掴みとなります。
一方、「高PERは要注意」であるのは間違いないでしょう。
高成長企業の場合
PER=投資回収期間と成長率の想定が妥当かチェック
安定企業の場合
「PERが跳ね上がった理由は何か」「今後の業績や配当にどう影響するのか」要チェック
このようにPERは買うタイミングの判断よりも、リスク管理に役立つ指標といえます。