【避けろ割高】PERの使い方-①
株価の割高・割安を判断する指標にPER(株価収益率)があります。
PER=現在の株価÷一株あたりの利益(以下、「一株利益」)
投資では「PERが〇倍だから割高(割安)」といった感じで使われます。
「ふ~ん」という感じですが、どのように投資に役立てるかは、いまいちピンと来ません。
私の考えでは、PERは明らかに割高な株を避けるのに役立ちます。
一方で、わかりやすい指標ですが、買いの判断にはあまり使えないかと。
今回はPERが意味するところとその使い方を紹介します。
目次
PER=投資の回収期間
一株利益は、その株を保有する投資家の権利です。
投資家が払ったお金(株価)を、一年当たりの投資家への分け前(一株利益)で割ることで、
「今の利益が続けば、何年で投資を回収できるか」が算出できます。
これがPERの正体です。
例えば、一株利益が10ドル、株価が100ドルのA社の株を買ったとします。
PERは100÷10=10倍となります。
これは、利益に変動がなければ10年で投資が回収できることになります。
PERの違いはどこから?
PERがややこしいのは、「成長」の要素が入ってくるからです。
今年の一株利益がA社と同じB社があるとします。
ただし、B社の利益は毎年10%成長します。
現在のB社の株価は120ドルで、B社のPERは120÷10=12倍です。
ではB社はA社と比べて割高なのでしょうか。
答えはNOです。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
ゼロ成長 (A社) | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
10%成長 (B社) | 10.0 | 11.0 | 12.1 | 13.3 | 14.6 | 16.1 | 17.7 | 19.5 | 21.4 | 23.6 |
A社の場合、投資元本の100ドルを回収するのに10年かかります。
B社の場合、利益が10%ずつ成長し、投資元本の120ドルを8年ちょっとで回収できます。
投資開始時のPERが高くても、成長率が高ければ早く投資を回収でき、B社の方が割安ということになります。
よってPERは投資の回収期間であるとともに、成長の期待値でもあるのです。
新興企業ではPERが100倍を超えるケースもあります。
当然100年かけて投資を回収しようなどとは誰も考えていません。
短期間での急速な成長を見込んで投資をしているのです。
成長の限界
しかし、成長期待といっても限度があります。
例えばテレビ会議のZoomを見てみましょう。
株価:266.32ドル
一株利益:3.24ドル(予想値)
PER:82倍
今の利益が続けば、投資の回収に82年かかります。
これでは生きている間に投資が回収できないので、高い成長率が期待されています。
成長率 | 1年 | 5年 | 10 年 | 11 年 | 12 年 | 13 年 | 14 年 | 15 年 |
10% | 3.24 | 4.74 | 7.64 | 8.40 | 9.24 | 10.17 | 11.19 | 12.30 |
20% | 3.24 | 6.72 | 16.72 | 20.06 | 24.07 | 28.89 | 34.67 | 41.60 |
30% | 3.24 | 9.25 | 34.36 | 44.67 | 58.07 | 75.49 | 98.13 | 127.57 |
表はZoomの利益が10%・20%・30%で成長した場合、元本266.32ドルを何年で回収できるかを示しています。
10%の成長では20年たっても投資を回収できません。
30%もの成長を13年間続けて、ようやく投資が回収できます。
この場合、Zoomの一株利益は3.24ドルから75.49ドル、約23倍となる想定です。
ここで考えるべきは、「Zoomの事業がそこまで拡大できるか?」です。
利益率が向上したとしても、売上が15~20倍は必要でしょう。
13年でZoomを今の20倍も使うような生活が想像できるでしょうか。
できなければ投資対象としては避けた方が賢明です。
投資回収期間は好みによります。
期待成長率を下げると、投資回収期間が長くなりますが、それでも良いと考える方もいるでしょう。
しかし、回収期間が長くなれば、必然的にリスクは高くなるので注意が必要です。
収益低下とPER低下の往復ビンタ
PERの公式を変換すると以下のようになります。
株価=PER×一株利益
PERは成長への期待度です。
成長企業の利益が予想に反して低下したとします。
すると成長期待がはげ落ち、PERも下がります。
株価がPERの低下と一株利益の鈍化の往復ビンタを食らったように下がります。
PER(低下)×一株利益(低下)=株価(爆下げ)
高い成長率が期待される高PERの銘柄は、その期待にこたえ続けないと株価を維持することもできません。
まとめ
先進国の経済成長率はよくて3%程度。
インフレを考慮しても5%程度でしょう。
企業が経済成長率を超える成長し続けるのは困難です。
ちなみにアップルやマイクロソフトでも、過去10年の成長率は平均で15%以下です。
成長を控えめに見積り、投資回収期間が許容できないほど長ければ、投資は避けるべきです。
そんな時、PERは明らかに割高な株への投資から救ってくれるツールとなります。