【賢人はかく語りき】シーゲル教授 Now
10/3のCNBCに、ペンシルバニア大学ジェレミー・シーゲル教授のインタビューが出てました。
/https://www.cnbc.com/2021/10/03/market-is-unprepared-for-inflation-fallout-whartons-jeremy-siegel.html?__source=sharebar|twitter&par=sharebar
シーゲル教授といえば、「株式投資の未来」(通称赤本)を読んだ方も多いかと思います。
配当投資のバイブル的な本で、私も大いに影響を受けています。
今回、シーゲル教授が示した見通しは以下のようなもの。
①最大の試練はインフレに伴うテーパリングの加速
②資産のデュレーションを下げるべし
③避けるのは成長期待のテック株
④有望なのは、デュレーションが低い配当株:エナジー、公益、生活必需品
⑤その他現物資産:金や不動産
以下、教授の意見についていくつか検証してみます。
目次
テーパリングの株への影響は?
低金利の恩恵
現在、FRBや日銀含め先進国の中央銀行が大量のマネーを供給し、金利は歴史的に最低レベルにあります。
例えば、日本のメガバンクの定期預金金利は、10年預けても0.002%。
100万円預けても、年間の金利はたったの20円です。
するとどうなるでしょう?
「どうせ20円しかもらえないなら、いっそ一攫千金を」という人が増えてきます。
現在の20円よりも将来の莫大な成長が望める企業への投資が増えます。
赤字を垂れ流すIT企業の株価が高騰する米国市場を見ても、金利と成長株投資との関係は明らかです。
金利が上がると・・・
しかし、金利が上昇し、例えば5%になるとどうでしょう。
100万円で国債を買えば、ほぼリスクなしに年5万円稼げることになります。
人は楽して儲けるのが大好きな生き物。
「一攫千金より確実な5万円を」という人が増えていきます。
すると将来の成長に期待して買われた株の値段が下がります。
現在、欧米を中心にインフレ率が高まり、物の値段が上がり、お金の価値が下がっています。
中央銀行の役割は物価を安定させること。
この状況が続けば、お金の価値を上げるために金利を上げ、国債の買入を減らし、お金の供給量を減らします。
テーパリングというやつです。
そして、歴史的な金融緩和を行ってきた中央銀行は、お金の供給量を減らす政策は無限に打つことができます。
(市場の混乱を無視すればですが・・・)
「中央銀行のテーパリングの加速が株式、特に成長株に悪影響を」という教授の懸念①・③は的を得ています。
資産のデュレーションを下げるとは?
デュレーションとは、簡単に言えば投資の回収期間のことです。
デュレーションを下げるというのは、投資の回収期間を短くすること。
つまり、「将来の成長」に賭けるより、「足元の利益」に注目することです。
例えば、利益が長期間安定し、PERが10倍の株であれば、回収期間は10年。
一方、将来の成長に期待する株はPERが数百倍、つまり回収期間が数百年であることも。
企業の先行きを予測することはできません。
想像以上の成長を果たし、あっという間にPERが成熟企業レベルになる可能性もあります。
しかし、成長期待の赤字企業よりは、安定した高配当・成熟株の方が投資の見通しは立ちやすいです。
爆発的な利益は期待できませんが、投資回収期間が成長株よりも短い可能性は高くなります。
教授が言っているのは、10年先の1万ドルに期待するよりも、現在の100ドルを見ろということです。
上記で述べたリスクまみれの現在の市場を勘案すると、至極もっともだと思います。
公益企業を買う意味は?
教授の本では、価格競争力があるブランドを持つ安定・成熟企業として、生活必需品やヘルスケア企業がプッシュされています。
一方、配当重視の教授の本の中でも、高配当の代表である公益銘柄(電力会社)については、ネガティブな意見が書かれています。
配当は高いけど、現状維持の設備投資に使う金額が大きすぎ、成長の余地がほとんどないからです。
その教授が今回のインタビューでは公益企業をプッシュしています。
意味するところは、安定・高配当に値する銘柄がほとんどなくなってしまったということでしょう。
確かに、今や安定の生活必需品企業でも、配当利回りはせいぜい2~3%程度。
インタビューからは、配当投資家受難の時代にあると教授が考えていることが読み取れます。
短評
インタビューの内容は目新しいものではありませんでした。
しかし、金利の上昇に備えて、資産のデュレーションを下げるという考えは参考になるかと。
金利が上昇すれば、PER数100倍といったバリュエーションの企業には大打撃となるでしょう。
もちろん、実際に期待通りの成長を実現し、勝ち組となる企業・株も必ず出てきます。
しかし、そんなわずかな確率に賭けるは、オッズが悪すぎるかと。
リスクに対し、得られるリターンが少なすぎます。
現在は成長ストーリーよりも目に見える利益を重視すべき時期かと思います。