【他人に頼ることなかれ-②】その失敗は誰のせい?
前稿では、専門家の予測に頼ることのリスクを、専門家サイドから検討しました。
(【他人に頼ることなかれ-①】プロの予測は役に立つ?)
本稿では、これを投資家サイドから検討していきます。
問題は以下のような心理から生じます。
・失敗を他人のせいにしてしまう
・自分の好きなものばかり見てしまう
・他人のいい所しか見えない
それでは順番に見ていきます。
目次
失敗は人のせい-Self attribution bias(帰属バイアス)
人は何よりも失敗や損失を恐れ、それを認めることを避けようとします。
そして失敗の原因を自分以外に求めます。
一方、うまくいった場合は都合よく自分の実力であると妄信します。
専門家の予測を鵜呑みにした場合、以下の心理が働きます。
・成功した・・・自分の実力
・失敗した・・・専門家の予測が間違っていたせい
投資には失敗がつきもの。
専門家の予測を鵜呑みにすると、失敗は専門家のせいにされ、反省の機会を失います。
好きなものだけ見てしまう-Confirmation bias(確証性バイアス)
専門家の予測を意見の一つとして聞く分には有用です。
自分が見落としていたことに気づく機会を得られるからです。
しかし、人間には「自分の考えに対し肯定的なデータや意見を探す」傾向があります。
例えば、アップルに投資している場合、以下のようなポジティブ予測はすんなり耳に入ってきます。
・iPhone13の売れ行きから株価は〇%の上昇余地がある
・収益性の高いAppStore事業により、〇億ドルの自社株買いが可能
一方で、以下のような都合の悪い予測は無意識にスルーしてしまいます。
・サプライチェーンの乱れによりiPhone13の売り上げが想定より下振れる可能性がある
・新たな規制によりAppStoreの収益性が鈍化し、株価上昇が鈍る
加えて、SNSの発達により、誰しもが簡単に意見を発信できるようになりました。
弊害として、「自分が見たいもの」だけを探すことも簡単になったのです。
他人の予測は、自分の見解と比較検討し、気づきを得るためのものです。
無意識のうちに、自分に都合の良い予測を探す傾向があることには注意が必要です。
自信の予測とは逆を行くものを、意図的に探してみるとよいかと思います。
私の失敗例はこちらから【失敗談】嗚呼アリババ-中国株の黄昏-
盲目的な信者に-Halo effect(後光効果)
人間は、自分が「素晴らしい」と思った人やものに対し、「そのすべてが素晴らしい」と無批判に信じてしまう傾向があります。
自分が好きな歌手の曲であれば、なんでも良い曲のように聞こえてしまう感じです。
例えば、米津玄師のファンだとします。
好きの度合いが増すにつれ、例えば「米津玄師のはLemonは傑作」から「米津玄師の曲は傑作」という風に拡大解釈してしまうのです。
しかし、彼の作品の中には、傑作もあれば駄作もあるでしょう。
世に出ていない没タイトルも多数あるはずで、すべてが素晴らしいというのは幻想です。
これは投資の世界でも起こりえること。
例えば、「ウォーレンバフェットが保有してるから」というのを理由にするのは危険です。
投資の神様だろうと間違うのです。
私の場合は、ウェルズファーゴで失敗しました。
配当利回りの高さとスキャンダルで株価が下がっていたこと、そして何よりバフェットが長期間保有し、スキャンダル後も保有し続けていることが決めてとなり投資しました。
投資の神様を信じた結果は散々(【心を鬼に】配当株でも損切を)。
おまけに、神様もウェルズファーゴ株のほとんどを既に処分しています。
まとめ
他人の予測を鵜呑みにして投資判断を行うことは危険です。
他人に頼り切り、短期的に良い結果を出せたとしても、自身の経験につながりません。
最悪の場合、それを自分のスキルだと勘違いしてしまいます。
相場の変動が激しく、予測が役に立たないときこそ、自分の意見を持つことが重要です。
失敗しても学びを得られるからです。
他人に頼って失敗したら、もやもや感が抜けません。
絶望的な状況の中で苦闘した経験が、明日への希望につながるのだと考えます。