【ほったらかし投資は有効か?-その1】下がれば上がるという幻想
最近「ほったらかし投資」なるワードをよく見かけます。
簡単に言えば、日本株や米国株などのインデックスファンドを定額・自動的に積み立て、後は何もしないというシンプルな投資方法です。
近年、DC(企業型確定拠出型年金)やiDeCo(DCの個人版)など、積み立てを行いやすい環境が整ってきました。
さらに、インデックスファンドの積み立てだけでなく、債券や他のアセットクラスとの配分も自動で調節してくれるロボアドバイザーなるものも一般的になってきました。
ほったらかし投資の利点としては以下のようなものがあげられます。
①投資の時間的分散(定期的に買っていれば、株価が下がってもそのうち上がる)
②心理的な安心感(日々の株価に一喜一憂しなくて済む)
③下手に売買しないから無駄な手数料や税金を支払わなくて済む
④DCやiDeCoを使えば節税効果がある などなど
しかし、何もせずに楽して儲けられるといったうまい話が本当にあるのでしょうか?
私は基本ネガティブなので、そんなうまい話はないと思っています。
本稿では、①と②を検討してみます。
目次
ほったらかし投資のメリットは?
ほったらかし投資のメリットとして、時間的な分散があげられます。
定額を定期的に買うことで、株価が下がった時には自動的に多く買い、上がった時にはその逆が行われます。
よって高値掴みを防ぎ、バーゲンセールを逃さないとされます。
一見すると合理的です。
しかし、これにも弱点があります。
ここでは1年に1回定額を購入するとし、以下のチャートが示す3つのケースを検討してみます。
ケース1(青色線): 株価が上下し、最終的には元の株価を上回る
株価が上下を繰り返し、最終的には元の株価を上回るパターンです。
この場合、1年目に買った株は下落に見舞われますが、2~4年目に安い株価で購入することができ、5年目の株価回復で大きなリターンを得ることができます。
株価低迷期でも投資を続け、それが実を結ぶほったらかし投資の理想形といえます。
しかしこの理想形が成立するには以下2つの条件が必要です。
①株価が適度に上下する
②長い目で見て株価が上昇or回復する
この条件を満たさないのが、ケース2と3です。
ケース2(オレンジ線): 株価の上下がほとんどない
理想形の条件①が満たされないケースです。
この場合、買値と株価がほとんど同じで、高値掴みもバーゲンセールもありません。
得られる利益はほぼ配当のみとなります。
しかし、現在のインデックスファンドの配当利回りは極めて低い状況(概ね1~2%)にあります。
これでは成長性は低くとも、高配当銘柄を買っておいた方がマシでしょう。
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ケース3(灰色線):株価がジリ貧・長期停滞
理想形の②もしくは両方が満たされないケースです。
定期的に買っても、株価が下がり続け、なかなか回復しないため、損失が長く続くパターンです。
「こんなこと起こらないのでは?」「長期で見れば株価は上がるもの」とおっしゃる方もいるかと思います。
しかし、「株価が下がればそのうち上がる」というのを過信するのは危険です。
いい例が日経平均株価です。
以下の図は過去30年の日経平均チャートですが、アベノミクス相場の開始まで20年以上ジリ貧。
30年経ってやっと株価がもとの水準に回復しています。
せっかく日本に暮らしているので、過去の教訓は大事にすべきです。
日本に限らず、株価の長期低迷は起こりうるシナリオと考えるべきでしょう。
ほったらかし投資の心理的影響
ほったらかし投資のメリットとして、「日々の株価にとらわれない」ということが言われます。
最初から買う金額も時期も決まっているので、日々の値動きに一喜一憂せず、安心して投資できるというものです。
しかし、ほったらかし投資の場合、大抵は日経平均などの株価指数に連動したインデックスファンドが利用されます。
それら代表的な株価指数を目にしないということは不可能ではないでしょうか。
NHKの5分のニュースでも、日経平均やダウ平均の終値がいくらかといった内容が含まれています。
私たちが意識しなくても、新聞やニュースから、わずか数秒でそれらの情報が入ってくるのです。
特に、ネガティブなニュースは大々的に報道され、目に留まりやすいものです。
バブル崩壊後の日経平均のようにジリ貧が続く場合、そのうち日々の株価に捉われなくなるかもしれません。
しかしそれは、「無関心」「あきらめ」といったネガティブな形で現れます。
そして、途中で解約するのも億劫になり、自動的に積み立てたインデックスファンドが塩漬けとなるのです。
まとめ
全体的に株価が高騰している現在、インデックスファンドでのほったらかし投資を開始するにはリスクが高いと考えます。
過去数年の高いリターンを勘案すると、ここから株価が上がらない、もっと悪い場合ジリ貧ということも十分に考えられるのです。
株価が下がっても、回復してくれればよいですが、「下がれば上がる」は絶対ではありません。
実際、日経平均は3万円台を回復するのに約30年もかかっています。
投資は長期でとは思いますが、「下がれば上がる」に期待するのに30年は長すぎます。
規律を守るという点では、長期積み立てというのは理にかなっています。
しかし、現在は株価下落時のダメージをなるべく低減できるよう、インデックスファンドではなく高配当利回りの安定した株に少しずつ・分散して投資していくのが良いかと思います。
特に、私のようなビビりで慎重な性格の投資家にとっては。