【最強の投資法?】インデックス投資のリスク
「投資を始めるなら米国株や世界の株に分散投資するインデックスファンド(もしくはETF)が一番」という声が最近よく聞かれます。
市場全体に連動するインデックスファンドに長期積み立てすれば、安心という風潮さえあるような・・・
長期積み立ては重要ですが、インデックスファンドだけでいいのかというと大いに疑問です。
ここでは一歩立ち止まって、そのリスクについて考えたいと思います。
結論から言えば、今はインデックスファンドへの投資を始める時期ではないと考ます。
本稿では、米国株式市場及び世界株式市場に連動するファンドをインデックスファンドとして検証します。
サンプルとして使用するのはこちら
・バンガード・S&P 500 ETF(VOO、米国の代表的な500銘柄に連動)
・バンガード・トータル・ワールド・ストックETF (VT、全世界の約8,000銘柄に連動)
それでは始めましょう。
目次
インデックス投資って何だっけ?
インデックスファンドは、価格が特定の指標に連動することを意図した投資商品です。
日本で言えば日経平均やTOPIX、米国で言えばS&P500やダウ平均等、ポピュラーな株価指標に連動するものが代表的です。
例えば、日経平均が1%上昇すれば、ファンドの価格も1%上昇するよう設計されており、分かりやすいのが魅力です。
特定の地域(ヨーロッパ・先進国等)や産業(ハイテク、エナジー等)にフォーカスしたものや、高配当重視・成長株集中といったインデックスも存在します。
リスク1.上昇トレンドが強すぎる
まずはインデックスファンドのリターンです。
銘柄 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 開始日 |
---|---|---|---|---|---|
VOO(米国) | 40.77% | 18.64% | 17.61% | 14.80% | 2010年7月 |
VT(全世界) | 40.57% | 14.66% | 14.79% | 10.18% | 2008年6月 |
両者とも10%を超える高いリターンを維持しています。
10年前に投資していれば、VTは2.63倍、VOOはなんと3.97倍になっています。
しかし、気になるのは近年のリターンが10年平均を大きく上回っていることです。
コロナなどなかったかのような上がりっぷりです。
今年に入っても勢いは衰えていません。
現在(8月27日)までにVOOは約19%、VTは約14%上昇しています。
では今後のリターンをざっくり見積もってみましょう。
まず年末の株価が現在(8月27日)の水準で終わったとします。
また2020年から2025年の平均リターンが10年平均(VOOが14.8%、VTが10.18%)に戻るとしましょう。
すると今後3年間の平均リターンは、VOOが約5.9%、VTが約0.4%と推定され、リターンが大きく低下します。
過去5年平均のリターンでも10年平均を大きく超えています。
加えてコロナショックを経て、株価にさらなるブーストがかかっています。
つまり、現在のリターンは、「調子がいい時期の中でもさらに調子がいい時期」にあると考えられます。
VOOに関して「5.9%なら悪くないのでは」と思うかもしれません。
しかし、開始日からわかるように、VOOはリーマンショックを経験しておらず、いいところだけ切り取っている感が強いです。
マーケットはこのような単純計算で予測できません。
しかし、絶好調は長くは続かないもの。
今後リターンが大きく低下する可能性は十分にあると考えます。
【表:VT株価グラフ(2011年8月~2021年8月)
リスク2.配当利回りが低すぎる
次に、配当を見ていきましょう。
ここでは現在の配当利回りと3年前(2018年)の利回りを比較していきます。
銘柄 | 2018年1月株価 | 2018年配当 | 2018年配当利回り | 現在の配当利回り |
---|---|---|---|---|
VOO | 251.3ドル | 4.73ドル | 1.88% | 1.28% |
VT | 76.3ドル | 1.65ドル | 2.16% | 1.62% |
両者ともに配当利回りが大きく低下しています。
これは配当額増加のペースを、株価上昇が大きく上回っていることを示します。
配当は安定したリターンの源泉であり、株価下落のショックを和らげるクッションになります。
現在の配当水準では、株価が2%弱下落しただけでもリターンがマイナスになります。
つまり、現在の株価水準は、わずかな下落に対して非常に脆弱なものになっています。
リスク3.インデックス投資の過大広告
「インデックス投資・長期積み立て」が魔法のキーワードのようになっていおり、ググればたくさんのポジティブな記事がヒットします。
「積み立てインデックス投資で楽に儲かる」といった内容の書籍も販売されています。
また、ウォーレン・バフェットら多くの著名投資家もS&P500指数等への長期投資を推薦しています。
しかし、人が群がるところにリスクはあるものです。
人と同じ行動をとっていると、自然と周囲の人につられやすくなります。
つまり、周囲の人たちが売り始めると、つられて多くの人も売りはじめ、株価が下落しやすくなります。
近年のリターンを考えると、ここ数年でインデックス投資をした人はかなりの含み益を持っています。
彼らが「そろそろ利益を確定するか」という心理になれば、株価の上昇が鈍りもしくは下落します。
皆が同じものを保有するがゆえ、同じ株価の変動に直面し、同じく利益確定売りが増えていくと考えられます。
ここで損をするのは、遅れてインデックス投資を開始した人です。
人気の投資法に乗っかるのは一つの手段ですが、時と場合は慎重に考えるべきです。
結論
長期的にインデックスファンドに投資するのが賢明という点は否定しません。
ですが、今インデックスファンドに投資するのは高値掴みのリスクが高いと感じます。
入口で失敗してしまうと、「長期でじっくり資産を形成する」というモチベーションがそがれてしまいます。
最初の失敗がトラウマとなり、投資そのものをためらうようになるかもしれません。
個人的には、「配当利回りが2%近くになるまでは待つ」といった慎重なスタンスをとるのが賢明かと思います。
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