【書評】サイコロジー・オブ・マネー②
サイコロジー・オブ・マネー①の続きです。
目次
5.生き残れ!
資産を増やすことよりも防衛することが大切だと説きます。
長い目で見れば米国株式市場は年率約8%のリターンを記録しています。
一方、短期的には価値が半減するようなショックにも見舞われます。
想定外のショックで元本を失い、追加投資の余力が無ければ、長期8%複利の恩恵を受けることはできません。
想定外のショックは予測できませんが、必ず発生するもの考える必要があります。
短期的なリターンの変動に左右されず、長期的での世界経済の緩やかな成長の恩恵をあずかる運用(例えば世界株のインデックスファンド)が賢明です。
【教訓】
・短期的な資産増<長期的な資産の防衛
・予想外のショックが起きても大丈夫な安全資産を持つ
6.失敗の確率を過小評価しない
特定銘柄・期間への集中のリスクを説きます。
1980年以降、ラッセル3000(米国のトップ3,000社のインデックス)企業の40%が、
70%を超える価値の下落に見舞われています。
そして、マーケットのリターンはわずか7%の企業の驚異的なリターンによりもたらされています。
マーケットリターンは多くの敗者と一握りの勝者のリターンが相殺し、全体としてプラスになっているのです。
また、投資のタイミングを計るのも危険です。
短期のリセッションで投資をやめてしまえば、回復の恩恵を受けることはできません。
ナポレオン曰く「世間が混乱している時に当たり前のことができる」のが天才とのこと。
【教訓】
・失敗は所与と考え、継続的な分散投資を長期に渡り実行する
7.自由と幸福
投資の話から少し外れて、幸福に係る議論が展開されます。
幸福のカギは「自己決定の感覚」にあると説きます。
自分の時間を自由に使える程度が高まるにつれ、幸福度も向上します。
いくら高給取りでも、毎日深夜まで働き、自分の時間をコントロールできなければ幸福度は低下します。
昔は1日の農作業や工場勤務が終われば、仕事について考えることなく自分の時間をコントロールできました。
一方、現代社会は通信機器の発達等により、年から年中仕事のことを考えなければなりません。
処方箋は、高級品や高所得を求める代わりに、時間を買うオプションを選択することです。
【教訓】
・高級品・高所得<自由な時間
・給料だけで仕事を決めない
8.見栄やステータスの価値は低い
高級品を持っていても、得られるのは自己満足のみです。
それによって周囲の人からの評価は買えません。
所有者と周囲の人の認識の差を表す「高級車のパラドクス」が紹介されます。
所有者:高級車を乗り回すことで、自身が成功者であると認められたい
周囲:高級車に乗っている人物に興味はない。「かっこいい車だな」と思うだけ
本書は、見栄やステータスのための支出を強く戒めます。
高級品では他者の評価は買えず、もっと高い車を見ると劣等感すら感じ、幸福度に対しネガティブです。
【教訓】
・ステータスへの支出はコスパが悪いマイナスサムゲーム
・自分が思っているほど、他人は自分に興味はない
9以下につづく