【書評】サイコロジー・オブ・マネー①
2021年12月に日本語版が発売された「The Psychology of Money」。
日経新聞などでも紹介され話題となっています。
GoogleBooksの書評は以下の通り。
「世界が絶賛! 超話題のマネー本がついに上陸。破産した大富豪と10億円もの資産を築いた地味な清掃員。2人にあった違いとは? 資産を築けない人の特徴、そしてお金を手にし続けるために大切なマインドセットを紹介する一冊。もうこれで、一生お金に困らない!」
紹介は俗っぽいですが、内容はいたって真面目。
せっかくなので原書を読破してみました。
そこで、全20章に渡るお金・投資の心理学について、1章ずつ見ていきます。
目次
1.自分の経験を過大評価するなかれ
私たちは自分が経験する世界がこの世のすべてだと考えがちです。
日常生活はそうかもしれませんが、投資の世界は別。
そして投資に対するスタンスは、特に青年期の経験に大きく左右されるとのこと。
例えば
高インフレ下で育った世代:実質金利の低い債券は投資対象から除外
低インフレ下で育った世代:低金利・低成長が当たり前。グロース株を選好
経験が最適な資産配分をゆがめるリスクがあります。
長期で見れば株も債券もバランスよく持つべき資産クラスです。
【教訓】
・インフレもデフレも起りうる(分散投資が必要)
・自分が経験するのは投資の世界の0.0000001%であることを自覚(経験を過大評価しない)
2.運とリスクはドッペルゲンガー
一人のスーパースターの投資法をまねるのは危険だと説きます。
彼らは大きなリスクを取り、運にも恵まれて大成功したからこそスーパースターなのです。
同じ方法をとっても、同じ成功をは望めません。
加えて、敗者は忘れ去られ、スーパースターがとった「リスク」の側面が過小評価されます。
いわゆる「生存者バイアス」です。
本ではロックフェラーとエンロンを例に出します。
ロックフェラーは法令違反ぎりぎりの行為を繰り返し、巨万の富を築きました。
一方でエンロンは不正会計が明るみに出て破産しました。
しかし、両者の差は「後知恵」によってはじめてわかるもの。
ロックフェラーが逮捕されて破産に至る未来もあったはずです。
【教訓】
・大成功した一人のスーパースターを信奉しない
・小さな成功にある共通項を探す
3.強欲の罪
「十分」の感覚を持つことの重要性を説きます。
筆者が説く幸福の方程式は
幸福=結果-期待値
期待値が高くなれば、いくら結果が素晴らしくても幸福はマイナスのままです。
その差を埋めようとさらにリスクをとると、せっかくの成功もいずれ消滅してしまいます。
SNS全盛の社会では投資で成功した人の話が満ち溢れています。
それが妬みをうみ、「もっと」という心理を助長。
期待値が上がり幸福感が低下します。
【教訓】
・小さな成功で満足する(期待値を下げる)
・「もっと」ではなく「十分」な感覚を持つ
4.複利の力(時は金成)
時間をかけてゆっくり資産を成長させていくことの重要性を説きます。
例えば、100万円でリターンが3%の株への投資を始めても、最初の年には103万円にしかなりません。
しかし同じ3%でも元本が1,000万円なら年間30万円の利益が発生。
複利で元本を地道に増やせば、同じ3%のリターンでも、得られる絶対額が着実に増えていきます。
元本の複利成長がリターンを加速します。
ウォーレンバフェットの保有資産の95%以上は彼が65歳を超えてから得たものです。
地道に元本を増やしていった成果です。
残念ながら人間は、日々の値動きや年率リターンなどのすぐ目に見える数字に左右されます。
そして、短期のリターンを狙い、単に株価が上がっている株を買ったり、さらに上昇するポテンシャルがある株をすぐに売ってしまうといったミスを犯してしまうのです。
若さ・長寿という武器を持っているにもかかわらず・・・
【教訓】
・時間を味方につける
・一時的な高リターンは長くは続かない
5以下につづく