【政治リスク】管理できないリスクは取るな!

中国の配車サービス大手DiDi(滴滴出行)が米国での上場廃止を発表しました。

海外企業でもADRという制度を使って米国で上場が可能です。
日本でもトヨタや武田薬品などのグローバル企業がADRを通じて米国で上場しています。

米国で上場するには、米国のルールに従わなくてはいけなりません。

米国のルールに馴染めなかったり、米国と敵対する国の企業については、
「政治リスク」という大きすぎて管理できないリスクがあるので注意が必要です。

管理できるリスク

リターンはリスクをとることへの報酬です。

長いスパンで見て、株式が国債などの安全資産より高いリターンをあげているのは、
株価の変動や企業の興亡などのリスクを引き受けているからです。

株式のリスクは高いですが、自分で管理することが可能です。

例えば、株式全般が高いと感じたら、株を売って現金・預金を増やしたり国債を買うなどして、
株価変動から受けるリスクを減らすことができます。

また、複数の企業に投資することで、倒産など個別企業からくるリスクも低減することができます。

管理できないリスク

今回のDiDiの上場廃止は、中国政府の意向が働いたものです。
このような政治リスクは管理することができません。

仮に事業や株価が好調であっても、政府の一存で一夜にして紙屑になる可能性があります。

米国市場なら米国の、日本市場なら日本のルールに従わなければ上場を維持できません。
ルールに従うには、上場先の国とある程度ルールや価値観を共有している必要があります。

日本や欧州など先進資本主義国の企業であれば、DiDiのようなことが起こる可能性は低いです。

一方、法による支配が確立されていない新興国は、ルールが未成熟かつ政府の権限が強い傾向にあります。
これらの国の企業は、ルールとのミスマッチや政府の一存による上場廃止リスクが隣り合わせです。

DiDiのような極端なケースは稀ですが、このような管理不可能なリスクは避けるべきです。

割安に見えるが・・・

特に米国のハイテク企業と比べると、中国のハイテク企業ADRは割安に見えます。
米国と中国の同種企業を例に挙げてみます。

指標的には割安だと私も思います。
しかし、「割安」程度では大きすぎる政治リスクを引き受ける対価としては不十分です。

習近平指導部の情報を扱う企業への風当たりの強さは報道もされているところ。
中国政府のスタンスがすぐに変わるとは思えず、政治リスクは排除することができません。

投資するならETFか投信で

これら中国企業に投資したいなら、香港や上海の市場で直接売買するのが良いでしょう。
少なくとも上場廃止リスクはADRと比べて大幅に減らすことができます。

それでも個別株への投資は非常にリスクが高いと考えます。

新興国の成長を取り込みたいなら、幅広い新興国に分散投資しているETFや投信などを利用するのが賢明です。

私の場合、SPDRポートフォリオ新興国株式ETF(SPEM)に毎月少額ずつ投資しています。
中国が約35%と最大ですが、インド・台湾など10か国以上に分散投資されており、
新興国特有のリスクを一定程度は減らすことができます。

まとめ

米国や日本でも、規制の変更等の政治リスクは発生します。
しかし、先進資本主義・民主主義国家では、企業が180度ひっくり返るような急激な規制の変更は、起こりにくいでしょう。

一方、中国をはじめとする法の支配が確立していない新興国では、これらのリスクがついて回ります。
特に、新興企業・ハイテク企業への個別投資は、規制の急激な変更に対して脆弱です。

慎重な投資家は、このような管理不能なリスクは取らないのが吉です。