【投資で学ぶ英語術】巨人の衝突~Visa vs Amazon~
高いインフレ率にも負けず、消費好調の米国。
しかし、本来消費の恩恵を受けるはずのVisaの動きが冴えません。
ここ1か月で10%以上下落(230ドル→205ドル)
追い打ちをかけるように、Amazonとの軋轢が表面化しています。
目次
記事
(英文)
Visa – Shares of the card giant dropped 4.7% following reports that Amazon will stop accepting payments made with Visa credit cards issued in the U.K. starting next year. That change came shortly after Visa raised its interchange fees for transactions between the U.K. and European Union. Mastercard, which has also increased its U.K.-EU interchange fees, fell 4.5% with Visa.(内容)
CNBC/2021/11/11より
ビザ:カード界の巨人の株価が4.7%下落。
アマゾンが、英国で発行されビザのクレジットカードによる決済を来年からやめるとの報道による。
この変更は、ビザが英国とEU間の交換手数料を引き上げた直後になされた。マスターカードも英国・EUを引き上げており、株価が4.5%下落。
頻出単語
giant:巨大な、巨大企業
ここでは、文字通り「巨人」を意味します。
石油メジャーなら「oil giant」などと表現されます。
いうまでもなくVisaはクレジットカード業界の巨人です。
fee:手数料
「~fee」で「~手数料」という形で頻出されます。
フィンテック業界では、いかに顧客の手数料を下げシェアを拡大するか、逆にいかに他で手数料を安定して得るかが競争のカギを握っており、あらゆる場面で使用されます。
Visa企業情報
・株価:205.06ドル(11/18終値)
・配当:1.5ドル(配当利回り0.73%)
・一株利益:5.27ドル(2020年9月期決算)
・概要
世界での決済額が10兆ドルに迫るクレジットカード最大手。日本でもトップシェア。
自らはネットワークビジネスに徹し、営業利益率は脅威の60%超。
短評
Visaの取引慣行にAmazonが怒りました。
英国のEU離脱に伴い、英国・EU間での手数料を引き上げたことが原因です。
Visaの収益力はえぐいです。決済が行われるごとに手数料が入る、まさにチャリンチャリンシステム。
しかも自らはカードを発行せず、顧客の信用リスクは銀行などに転嫁しており、財務も盤石です。
それでもまだ抜け目なく稼ごうとするとは・・・
両社の言い分は以下の通りです。
Visa
クレカの利用を制限するのはアマゾンは消費者の利益を損なっている!
Amazon
英国のEU離脱に付け込み、手数料を引き上げたVisaは出店者の利益を損なっている!
EU間での決済には上限がかかっていますが、EU離脱後の英国にこのルールは当てはまらず、
Visaは手数料を引き上げました。
ある意味当然ですが、Amazonはこれに噛付きました。
Visaの決済が増えれば、Amazonの売上も増える、両社は相互補完的な企業にも見えます。
Amazonは決済手段の制限により、自らの売上が減るリスクも負っています。
制限は英国・EU間の取引のみに適用されるため、VisaとAmazonの事業への直接的影響は小さいと思います。
しかしAmazonの本音は、「決済も自分たちでやって儲けたい」というところ。
このようなAmazonからの締め出しが今後も起るのか、Fintech企業を見るうえで要注目かと。
まずはAmazonがジャブを打った形です。
買い時は?
過去の記事ではペイパルとビザの比較を行いました。(両社の収益は以下の通り)
売上 | 営業利益 | 営業利益率 | フリーCF | CFマージン | |
---|---|---|---|---|---|
Visa | 229.7億ドル | 150.0億ドル | 65.2% | 120.4億ドル | 52.4% |
PayPal | 214億ドル | 32.9億ドル | 15.3% | 49.8億ドル | 23.2% |
Visaの収益性はとにかく圧倒的です。
Visaは100ドルの売上に対し、52.4ドルのキャッシュを生み出しています。
バリュエーションはどうでしょう。
予想一株利益 | 株価 | 予想PER | |
---|---|---|---|
Visa | 7.03ドル | 205.06ドル | 29.16倍 |
今回の下落により、一時40倍近かったPERが30倍を割り込んできました。
また、潤沢なキャッシュフローに支えられ、毎年増配をする余力はあり、
ここ数年は年に8,000億円ほどを自社株買いに充てるなど、株主還元にも積極的です。
ただ、私のような配当株メインの投資家が手を出すにはもう少し下がってほしいと思います。
個人的な計算では、190ドルを割れば買ってもよいかなと。
高い収益性・安定性に支えられた銘柄で、買値を間違えなければ、長期保有できる銘柄の一つだと思います。
一方で、市場支配力の強さから、今回のようなVisaの取引を制限する動きが今後も発生するリスクはあります。
しばらく動向を見守りつつ、バリュエーションがもう少し下がるのを待ってもよいかと。
短期的な反発に賭け、すぐ飛びつくのは避けた方が良いでしょう。