【高値掴みに要注意!】スーパースターは高くつく

2022年1月13日

先週は上がり調子の日本市場と対照的に、米国市場が冴えない一週間でした。
ダウ平均は5日連続で下落。
ナスダックとS&P500も週間で約1.6%の下落でした。

こういう時に気を付けたいのが、少し株価が下がったからといって「スーパースター」を買うことです。
スーパースターの典型といえば、いわゆるGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンドットコム、マイクロソフト)など。

例えば、アップルが先週金曜日に3%下げましたが、これを買いのチャンスと思うのは避けるべきかと。

なぜならこれらの株は既にスーパースターの名にふさわしいリターンを記録してしまったからです。

そして、スーパースターの株で損をするのは、概して後から市場に参加した人、我々初心者や慎重な投資家なのです。

以下、高値掴みを避けるためにも、その理由を検討してみます。

スーパースターなら間違いない!~利用可能性バイアス~

米国株投資を勧める理由として本や記事でよく言われるのが、「米国はイノベーションの中心」「右肩上がりの市場」といった、成長のポテンシャルに関するものです。

そして米国株・成長と聞いたら、まず思いつくのはアップルやマイクロソフトなどの大型テック企業ではないでしょうか。
これら企業は日本のニュースでもしばしば登場します。
また、これら企業の製品(iPhoneやWindows)は我々の生活に深く浸透しており、目につく機会が非常に多く、米国株投資といえば最初に候補に挙がってくることかと思います。

そう。スーパースターは目立つのです。

そして、人間心理は目立つものに弱いのです。

これは、利用可能性バイアスという心理的バイアスに由来します。
個人が集められる情報には限りがあるため、よく知っている・ポジティブなニュースをよく見聞きするものに引き寄せられるというものです。。

そして、これを満たすのがGAFAMといった巨大テック企業であり、これらを買っとけば間違いないだろうと何となく買ってしまうのです。

そしてそれが高値掴みの原因となります。

スーパースターの宿命~高い期待と結果のギャップ~

以下の記事で米国市場全体に投資するインデックスファンドの素晴らしいリターンを紹介しました。
【最強の投資法?】インデックス投資のリスク

しかし、スーパースターは格が違います。
以下の表はS&P500指数に連動するインデックスETF(VOO)とマイクロソフト、アップルの過去5年のチャートを示したものです。

年率リターン(2016年9月~2021年9月)
VOO:15.5%
アップル:39.4%
マイクロソフト:32.8%

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歴史的に見ても好調だった米国市場全体をはるかにしのぐパフォーマンスを上げており、これこそスーパースターたる所以です。

しかし、次の5年に同じ結果を残すことができるかというと、かなり疑問かと。
スーパースターの宿命として、期待値が大きくなり過ぎるのです。

私たちは何かを評価する時、必ずと言っていいほど期待値と結果の差で評価します。
みんな大好き「コスパ」というやつです。

例えば、プロ野球のFAを考えてみましょう。
FAで獲得される選手の多くは、過去の素晴らしい実績に基づき、高額報酬で引き抜かれ、その時点で期待値はマックスです。
期待値が高いからこそ、そこそこの成績ではファンに満足してもらえません。
過去の実績が素晴らしくとも、引き抜かれた時点でピークを過ぎていることもしばしばです。
そして「コスパが悪い」と叩かれるのです。


これはアップルでもマイクロソフトでも同じこと。
これら既に巨大な企業が、今後さらに売上げや利益を向上させ、期待に応え続けるのは極めて難しいことです。

期待に応えられなければ、容赦なく売られる・株価も上がらないというのは、プロ野球選手と同じでしょう。

低すぎる配当利回り

株価が下がっても配当がそのダメージを軽減してくれると書きました。【下落はチャンス?】配当投資の底力
しかし、スーパースターの配当利回りは概して低いもの。
投資家は配当なんかよりも株価の値上がりに期待して買っているからです。

GAFAMのうち配当を支払っているアップルとマイクロソフトの配当利回りを見てみます。
5年前の一株当たりの配当・配当利回りを現在の数値と比べます

配当(2016年)配当利回り配当(2021年)配当利回り
アップル0.55ドル1.9%0.88ドル0.57%
マイクロソフト1.39ドル2.7%2.24ドル0.75%
※2016年の配当・配当利回りは実績ベース。2021年は9月12日時点の数値

両社とも着実に配当を増やしているにもかかわらず、配当利回りは大きく低下しています。
配当の増加以上にさらなる株価の上昇を期待されているからです。

マイクロソフトであれば、100万円投資して配当は7,500円(税引き前)です。
これではネット銀行のキャンペーン金利と大差ありません。

投資時点での配当利回りが低いということは、下落に弱い(配当で損失を軽減できない)だけでなく、「配当を趣味に使いたい」といった需要を満たすこともできません。

まとめ

私はアップルもマイクロソフトも買ったことがあります。
幸いにも結果はプラスでしたが、それは買値がここまで高くなかったからです。
アップルの場合は、コロナショックの3月に買いました。
スーパースターが一時的に絶不調の時に買ったようなものですので、ある程度の回復は当然でしょう。
私のスキルでもなんでもありません。

しかし今、スーパースターは投資家の期待に十二分に応えてしまったがゆえ、期待・株価ともにかなり高くなってしまいました。

スーパースターの株を買うか迷っている慎重な投資家の方。今はステイで。
私のような臆病な投資家が慎重さを捨てたとき、それは高値掴みというババを引かされるときです。
少なくとも、ある程度配当利回りが高まるのを待つのが賢明です。