【書評】サイコロジー・オブ・マネー③
サイコロジー・オブ・マネー②の続きです。
目次
9.資産=所得+貯蓄-支出
裕福とリッチは異なると説きます。
「裕福」というと、リッチになってもっとお金を使うという図が連想されます
しかし、お金を使うことは裕福になることとは対極にあります。
リッチ=可処分所得の向上ですが、支出の伸びがそれと等しい限り裕福にはなれません。
収入が倍になっても、もっと家賃の高い家に引っ越せば裕福にはなれません。
裕福になることは、もっとお金を使うことではなく資産を増やすことです。
そして資産を増やすメインドライバーは可処分所得を増やすことではなく、節約することです。
【教訓】
・可処分所得が増えてリッチになっても、支出を増やせば裕福(=金銭的な安心感)にはなれない
・裕福になることを支出増と結びつけない
10.貯蓄は王様
特定の理由がなくとも貯蓄に励むこと推奨します。
多くの人が貯金や投資を将来の目的に紐づけてやる気を維持します。
しかし、貯蓄の真の効用は、将来の目的を達成することよりも、人生に「柔軟性」をもたらすことにあります。
優れたスキルを持っていても、経済の状況や周囲の環境に恵まれないケースは発生します。
一方、十分な貯蓄があれば、環境の変化を待ったり、リスキリングするチャンスを得ることができます。
これが、人生を自身でコントロールしているという感覚をもたらし、幸福度が上昇します。
貯蓄することに理由はいりません。
【教訓】
・貯蓄の価値は「柔軟性」を人生にもたらすことにあり
・貯蓄をするのに理由はいらず、難しく考える必要もない
11.合理的ではなく理性的に
合理的な投資としてインデックスファンドへの長期積み立て投資がもてはやされています。
これは「市場は合理的である」という効率的市場仮説に基づきます。
一方、金融市場において常に合理的に振る舞うことは不可能です。
頭ではわかっていても、市場の下落を目にすればインデックスファンドでも売りたくなります。
常に合理的であるなら、バブルは発生しません。
合理的(Rational)になろうとせず、一定の分別をもって理性的(Reasonable)に振る舞えれば、
長期的に報われる可能性は高くなります。
【教訓】
・完全に合理的な投資家になることを目標とする必要はない
・低リターンでも損失が出なければよしとする
12.サプライズを予想しない
市場を大きく動かすようなサプライズを予測することは不可能だと説きます。
過去のサプライズが予想できたというのは、事後的な検証による「後知恵」に過ぎません。
人間の脳は特定のイベントの記憶に強く左右され、将来の予測に対し自信過剰に陥いりがちです。
ITバブル崩壊を経験したはずの投資家が、数年後にはリーマンショックに苛まれたのもこのためです。
経験に基づき「サプライズは予想できる」、「自分は大丈夫という」誤解を持たないことが賢明です。
過去のサプライズから学べることは、「予想もつかないサプライズが起こる」ということのみです。
【教訓】
・サプライズは自分の想像できない規模とタイミングでやってくる
・自分が思っているほど、他人は自分に興味はない
13以下につづく